分野:物質科学(マテリアルサイエンス)。主に低次元物質(原子層物質、ナノチューブ・ナノワイヤーなど)を対象とした物質開発、物性実験、およびデバイス応用。
特に、独自の物質作製から始まり、測定系の構築、物性測定、解析・計測プログラムの作製、そして理論やモデルの構築などを、研究室内外の学生や共同研究者と一緒に進めています。特に、新しい物質やヘテロ構造の作製を通じて、基礎物理やデバイス応用の研究が展開できることを目指しています。2013年の着任以来、研究室の学生と一緒に、新たな合成装置や顕微分光・イメージング測定系などの立上げ、試料合成・デバイス作製プロセスの開発、データの取得・解析・解釈、などを日々議論しながら研究を行っています。
配属が決まった学生には、日々の実験・解析と議論から、研究室セミナー、研究会や春と秋の学会(物理学会、応用物理学会、フラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会、等)での発表、英語での論文執筆を通じて、研究に役立つ専門知識に加え、就職後にも必要となる論理的なプレゼン・文章作成など様々な事を経験し習得してもらいたいと考えています。特に、修士1年終了時までに学会での口頭発表や英語論文執筆を経験すると、その後の進路(博士課程進学や就職活動)において選択の幅が広がり、また各種選考(日本学術振興会の特別研究員、等)で有利になります。また、このような一連の経験を積むためにも、規則正しい生活を推奨しています。研究室に興味のある学生の人は、実際に訪問して先輩や教員、居室や実験室の雰囲気を掴んでもらえればと思います。
対象物質
・グラフェン、窒化ホウ素、および遷移金属ダイカルコゲナイドなどの2次元物質
・カーボンナノチューブ・ナノリボン・ナノワイヤーなどの1次元物質
実験手法
・化学気相成長による物質合成
・電子顕微鏡・走査プローブ顕微鏡を用いた原子配列・ナノ構造観察
・顕微分光・イメージングによる構造・電子状態評価
・電界効果型トランジスタ等のデバイス作製と電気伝導特性の評価
最近の研究テーマについて、以下で紹介していきます。
2010年ノーベル物理学賞の対象となった物質が、炭素の二次元膜である「グラフェン」と呼ばれる物質です。この物質は、2004年に初めて安定に存在することが確認されて以来、現在まで、基礎物理と応用、両面の面白さから世界中で大きな注目を集めてきました。ごく最近になり、グラフェンだけでなく、窒化ホウ素や二硫化モリブデンなど、炭素以外の二次元物質を人工合成することが可能になり、二次元物質の研究は新たな展開を迎えようとしています。
私たちの研究の特徴は、異なる二次元物質の接合(ヘテロ接合、図1)技術を基盤として実現できる、「接合部に生じる一次元界面」や「量子細線」に着目し、新規物性の探索や次世代のエレクトロニクスやオプティクスへの応用を目指している点です。具体的には、グラフェン、窒化ホウ素(BN)、二硫化モリブデン(MoS2)等の結晶成長およびヘテロ接合技術の開発、接合面の光・電子物性解明、電子顕微鏡による界面構造の評価、電界効果トランジスタ等の電子デバイスの試作、を進めています。
最終的には、極限的な微細伝導チャネルかつ単原子厚のサイズを持つ光・電子素子のプロトタイプを実証まで進めていきたいと考えています。
参考文献:
Y. Miyata, et al., Appl. Phys. Express 5 (2012) 085102.
Y. Kobayashi, et al., Nano Res. 8 (2015) 3261-3271.
S. Yoshida, et al., Sci. Rep. 5 (2015) 14808-1-6.
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カーボンナノチューブは、上記のグラフェンを円筒構造に巻いた物質です。この物質は、内部に様々な原子や分子を内包させることができるため、通常では困難な合成法、もしくは不安定さゆえに存在自体できない物質が実現できると期待されています。私たちは、芳香族化合物などの有機物を内包し、内部で融合させることで構造の定義された一次元物質の合成を試みてきました。具体的には、原子数個分の幅を持つグラフェン(グラフェンナノリボン、図2)の合成法と物性や、さらに、この細いグラフェンが巻いて特殊な構造のカーボンナノチューブが成長すること、などを明らかにしてきました。
現在では、このような内包系に期待される一次元金属・磁性などの検証や、新たな一次元物質および分子センサーの実現を目指し研究を進めています。
参考文献:H.E. Lim, Y.Miyata, et al., Nature Commun. 4 (2013) 2548. 日本語要旨
M. FUjihara,Y.Miyata, et al. J. Phys. Chem. C 116 (2012) 15141.
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